妹戦記デバイシス/日下 一郎
- 2013/07/14
- 22:40
妹型の侵略者「異妹(アウタ・シス)」に対抗できるのは妹力で飛ぶ二人乗り戦闘機「デバイシス」だけだった!みたいな狂気のSFライトノベル「妹戦記デバイシス」のレビュー。一発ギャグみたいな話かと思いきや、こいつがなかなかイカしたSF小説でしたよ。ある日人類は謎の侵略者「異妹(アウタ・シス)」の攻撃を受けます。そいつらが侵略に利用したのが「妹」という概念。アウタ・シスの概念霍乱フィールド「妹圏(シス・ゾーン)...
未完少女ラヴクラフト/黒史郎
- 2013/01/22
- 01:20
クトゥルフ系ラノベ「未完少女ラヴクラフト」のレビュー。一番最初に目を惹くのはやはり表紙でしょうか。ライトノベルにあるまじきモノトーンの色彩と質素なゴシック体のタイトルは、それ自体が創元推理文庫の「ラヴクラフト全集」のオマージュになってます。このオマージュをはじめとして、物語の表層から内奥までクトゥルフとラヴクラフトへの愛に満ち満ちた内容(欄外の元ネタ解説にしても、「アーカム」の設定にしても、ホント...
完全なる首長竜の日/乾緑郎
- 2012/01/14
- 03:34
乾緑郎の小説「完全なる首長竜の日」のレビュー。「このミス」大賞受賞作なんだけど、殺人事件とか刑事とか探偵は出てきません。謎を解く話ではあります。ミステリーよりはSFと言った方がしっくりくるかなあ。大森望が褒めてるし。主人公は少女漫画家。話は子供時代の回想から始まって、彼女の家族の話、現在の彼女の生活など、エピソードは時間も場所もあっちこっちにふらふら彷徨います。そして出てくるのが彼女の弟。弟は昏睡状...
魔法少女まどか☆マギカ 小説版/一肇
- 2011/08/15
- 22:06
テレビアニメ「魔法少女まどか★マギカ」の小説版のレビュー。上下巻で、著者は一肇。まどかマギカの脚本を務めた虚淵玄と同じニトロプラス所属のシナリオライターだ。魔法少女まどか★マギカは全12話の深夜テレビアニメ。平凡な中学生の主人公まどかの所に、テレパシーで人間とコミュニケートする不思議な生物キュゥベエが現れて、「どんな願いも1つ叶えるかわりに、魔法少女になって魔女と戦ってくれないか」と告げる。それをき...
壊れかけのムーンライト ブギーポップ・アンノウン/上遠野浩平
- 2011/01/11
- 00:46
上遠野浩平のブギーポップシリーズ最新刊「壊れかけのムーンライト」のレビュー。数人の高校生の男女がいて、目的はみんなバラバラなんだけど、全員が学校で流れている一つの噂を追っかけています。その噂のことは女の子しか知らなくて、ちょっと変わっていて──というと、ブギーポップの事かと思いますが、そうじゃありません。追う噂の名前は死神ブギーポップではなく「レモン・クラッシュ」。その光は、心の奥底に眠る願いを叶え...
2010年読んだ本ベスト5
- 2010/12/27
- 23:21
今年レビューした本のまとめ&その中から特に面白かった本5冊を上から順にご紹介。という記事です。いやあ、先日書いたボードゲームのレビューまとめ記事が自分で書いてて面白かったんで、本でもやってみようかな、と。とりあえず僕の今年のレビュー記事のご紹介から。タイトルをクリックすると各レビュー記事に飛びます。あくまでも「僕が今年読んでレビューした」っていう括りなので、今年出た本とは限らないんですが。小説僕は...
ZOKU/森博嗣
- 2010/12/17
- 00:22
森博嗣の小説「ZOKU」のレビュー。「TAI」と「ZOKU」、正義と悪の2つの組織の戦いを描く全5話の連作短編集。なんだけど、まあ、コメディですよコメディ。何故なら、ZOKUの悪事がとってもショボい。例えば、誰かの家の庭の三箇所にスピーカーを埋め込み、上空から赤外線通信でバイクの音を送信する。家に住んでる人は、外でバイクが五月蠅く走っていると思ってちょっと迷惑する。なんかそういう、規模はでっかいのにショボい。みた...
すべてがFになる/森博嗣
- 2010/11/16
- 22:35
森博嗣の小説「すべてがFになる」のレビュー。孤島の研究所の密室で、研究所の中心人物、真賀田博士が殺される。偶然その場に居合わせてしまった大学助教授の犀川と学生の萌絵は、行きがかり上、事件に深く関わっていくことになる。というミステリー小説。僕はミステリー物って小説でもドラマでも結構好きで、わりとよく読みます。でも「犯人はだれか?」とか「どうやって殺したのか?」的な読み方をあんまりしません。じゃあどん...
六百六十円の事情/入間人間
- 2010/11/12
- 03:09
入間人間の小説「六百六十円の事情」のレビュー。駅前でギターをかきならし続ける無職女、クラスメイトが気になる高校生、家出を画策する小学生、世界の平和とか自分の生活とかを憂う無職男、家出をした爺ちゃん、という、5人の男女を主人公にした5つ(+α)の短編集。それぞれ独立した短編なんだけど、みんな同じ町に住んでいて、それぞれの登場人物と微妙にすれ違ったり関わったりする。そしてどの話も「カツ丼660円」がキーワー...
私と悪魔の100の問答/上遠野浩平
- 2010/11/02
- 00:18
上遠野浩平の小説「私と悪魔の100の問答」のレビュー。「ハズレ君」という変な人形が発する100の問いに、葛葉紅葉という17歳の女の子が、答えたり答えなかったり考えたり悩んだりする話。あらすじを説明すると本当にそれだけ。本編の大半を二人の奇妙な問答が占めています。上遠野浩平の書く他の小説は、三角関係の行く末だったり、2人の超能力者の対決だったり、わりとはっきりとした筋のある話です。でもそこにオマケがいっぱい...
失はれる物語/乙一
- 2010/10/25
- 23:26
乙一の短編集、「失はれる物語」のレビュー。元々は角川スニーカー文庫からライトノベルとして出ていた短編集「きみにしか聞こえない」「さみしさの周波数」「失踪HOLYDAY」から1~2本ずつ短編を選び、さらに書き下ろし短編を加えて、角川文庫から一般書籍として出し直した物。ライトノベルレーベル、といっても初期の角川スニーカーはライトノベルレーベルとしては結構異質で、いわゆる漫画チックな要素(極端にデフォルメされ...
桃山ビート・トライブ/天野純希
- 2010/10/19
- 23:56
天野純希の異色の時代小説「桃山ビート・トライブ」のレビュー。「音楽の才能は凄いが社会の枠組からはみ出し気味の若者達が、バンドを結成してのし上がっていく」という、よくある青春ロックストーリーを、桃山時代末期の混乱した世情に絡めて描く、かなりユニークな時代小説。ギターストラップで三味線を首から提げた主人公が演奏しながら、ステージから客席に向かって「何のんびりすわっとんねん、立たんかボケェ」とか煽っちゃ...
GJ部/新木伸
- 2010/10/18
- 20:09
新木伸の小説「GJ部」のレビュー。主要登場人物は5人。GJ部という、何をやるのかわからない謎の部活(たぶん、キャラを放課後に集まらせるための方便としての機能しかいらないから、意識的にそうしてある)があって、主人公の男の子がいて、部活仲間が女子4人。で、そのGJ部の面々の昼休みや放課後のひととき(しゃべったり、飯食ったり、漫画読んだり)をひたすらスケッチするという、1本4ページ、全36本の連作超短編集。謳い文句...
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹
- 2010/10/16
- 11:22
桜庭一樹の小説「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」のレビュー。タフな状況を生きる二人の少女が友情を育む話だ。でも、片方の女の子、海野藻屑は死ぬ。無惨な死体になってもう片方の女の子、山田なぎさに発見される事が冒頭で確定している。冴えない田舎の港町の中学校に、都会から海野藻屑が転校してくる。有名人の娘で美人、人魚を自称する変な女だ。家が貧乏で夢を見る余裕もない山田なぎさは、彼女を一目でイラッとする奴と認識...